1.税理士の専門家責任(従業員を含む)
税務専門家としての税理士の責任には、その従業員を含み次のとおり3つある。
❶忠実義務
#忠実義務とは依頼者との合意内容を忠実に履行する義務である。
❷善管注意義務
#善管注意義務とは依頼内容の実現にあたり依頼者からの特別の指示があったか否かを問わず善良なる専門家として尽くすべき慎重配慮の義務でありその注意義務の水準は関連法令と実務に通じた標準的な専門家に期待される注意義務である
❸説明助言義務
#専門性の高い依頼内容に対する依頼者の自己決定権の行使を確保する税務専門家の説明と助言に係る義務である。

2.債務不履行による損賠請求権の成立要件
❶成立要件
税理士の債務不履行による依頼者の損害は依頼者が損害賠償を請求できる(民法415条)。
❷債務不履行による損賠請求権が発生する要件
この要件には次の4つがある。
債務不履行の事実
・税理士に債務不履行があった事実が要件の一つである。
税理士責任となる帰責事由
・2009年の債権法の基本方針では「契約において税理士が引受けなかった」事由による債務不履行発生に関して、税理士は債務不履行を理由とする損賠責任を負わないとして税理士の帰責事由の表現を避けている。
・しかし、税理士が契約で「いかなる債務を負担したか」を確定した上で、「どのような事態について」、税理士の免責を契約内容に即して税理士の帰責事由を評価する。
債務不履行との因果関係
・損害の発生と債務不履行の事実の間に、債務不履行がなければ損害は発生しなかった事実的因果関係が必要であるが因果関係で全ての損賠責任があるとはならない
・しかし民法416条2項では、税務依頼人の特別の事情による特別損害は「特別の事情」の予見可能性を立証しないと賠償範囲には入らない。
損害の発生事実
・依頼者に実際に損害が発生している事実が要件の一つである。

3.民法418条の過失相殺
税理士の債務不履行に関し「依頼者の過失」は、裁判所がこれを考慮して損賠責任及び損賠額を定める旨の規定がある。
・ここでの過失は、債務不履行の帰責事由や、不法行為要件の過失とは異なり、当事者間の衡平のため程度の意味である。

・不法行為における過失相殺との違いは、
㋐「金額」及び「責任」に条文上「裁判所の裁量」を認める点にある。
・従って債務不履行について過失相殺の結果、責任否定も可能である。
・民法722条と異なり「定める」規定により、過失相殺の考慮が裁判所の義務である。
・債務不履行と不法行為の区別をせず、過失相殺で損害額ゼロも可能、考慮も裁量とするなっている。
・過失相殺は裁判所の職権であるが、依頼人の過失事由には税理士の主張立証が要る。

4.時効(除斥)
税理士の民法709条不法行為に係る依頼者の損賠請求権は「損害および加害者を知った時から「3年」、生命・身体を害する場合は特則で「5年」で時効に、税理士の不法行為時から「20年」が除斥期間で自動的に時効になります。
報酬に含む「経理検査」とは?
#経理検査は税理士義務として事業の決算申告の依頼に於いては報酬に含まれる

5.参考
税理士による経理検査の内容とは?
確定申告「概況書」に業種検査・過年度比較・経営指標検査の3項目を必ず盛り込む。
⑴ 業種の吟味(依頼者が税務署への届出業種)と「実態の業種」を検査する
⑵ 過年度比較(決算書の3期比較)で勘定科目の「数値の異動」を検査する
⑶ 経営指標の検査(同規模同業種の経営指標)の検査をする
※TKC経営戦略月刊誌の経営指標で主に「原価率」を検査する。

丸投げ経理とは?
領収書のカド揃えをした束を次の順序で経理処理する手順である。
依頼者→顧問税理士事務所へ
・納税者が自社で「領収書のカド揃え」をした領収書の束を紙袋に入れ送達する
税理士事務所→「MFスキャナセンター」
・顧問税理士は(紙袋に詰め込んだ)カド揃え済みの領収書をMFスキャナセンターに送る
「MFスキャナセンター」→顧問税理士へ
・領収書をスキャナで自動経理した仕訳帳ファイルを顧問税理士に送る
・顧問税理士は「仕訳帳」の検査をする
顧問税理士→MF社(又はfreee社)のクラウド会計ソフト)に入力する
・全自動会計ソフトなので「経理帳簿」が自動的に出来上がる
・経理帳簿の誤謬を検査する
・顧問先は予め銀行勘定ごとの「銀行インターネットバンキング」利用の申し込みをしておく(銀行勘定が多くあると費用が嵩む。ネット銀行を平素の取引に使うとその銀行勘定は無料で済む)。
節税等
依頼者(納税者)は顧問税理士と相談して「劇的な節税戦略」の実践する。