費用売上の計上時期

はじめに
会計は「一般に公正妥当と認められた会計慣行」が基本です。
税法も、原則として、その会計慣行に沿って、税務行政を取り仕切っています。
ここでは、一番、基本的な、費用と収益(売上)を経理係として経理仕訳に計上する年月日について、まとめましたので、ご参考しして戴ければ幸いです。
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企業会計として「脱税の意思」はないと仰せの社長は、例外を除き100%です。しかし「税法・会計原則(中小会計要領)」を理解していない社長も、小規模企業では、例外を除き100%です。

「脱税しない」と云いながら、強い意気込みで「節税が先生の仕事でしょう!」と詰め寄るお客様も、いらっしゃいます。困った!

今、政府も経済7団体も、「小規模企業の社長さん」が、必須の経理知識を理解して戴くように、中小企業庁と連携して「中小会計要領」を、発布しています。ぜひ「経理学習」も社長の資質として、必用なんだということを、ご理解下さるようお勧めします。

少なくとも、税理士事務所に、「違法な『無意識の脱税』を強要しないよう」お願いします。例えば「知り合いの社長さん達に聞いたら、費用に落ちると言ってました」とか、「税理士さんなら費用に落とせるから相談しなさい」などと、無茶なことを云わないで戴きけたら、大変に有難いと思います(笑)。
費用・収益の計上時期

1 損益計算の方式

期間損益計算は、
企業業績の尺度となるような利益を算定することを指向する『発生主義会計』と、
客観的な利益を算定することを指向する『現金主義会計』という損益計算の方式に分類されます。

(1)発生主義会計

発生主義会計は、費用・収益の認識を、現金収支にとらわれず、「会社の活動実態」を会計帳簿に描きとる(書き取る)ようにします。経理仕訳の年月日が特に重要な論点です。つまり合理的な期間帰属を通じて、期間業績を反映させる損益計算の方式です。
この会計方針に沿う「発生主義会計」を採用すれば、正しい期間業績の把握が可能となると云うわけです。

従って、発生主義会計は、必ずしも現金収入という貨幣性資産の裏付けのある収益を認識する「現金主義」による処ではありません。そのため、純粋に発生主義会計により期間損益計算を行う場合には、利益処分の可能性が100%ではない点で、問題があります。

(2)現金主義会計

現金主義会計とは、費用・収益の認識を、現金収支の事実に拠り認識する損益計算の方式です。
現金主義では、客観性の高い期間損益計算を行うことを可能にするといえます。
  ㋑ 収益を現金収入時において、認識する方法
  ㋺ 費用を現金支出時において認識する方法

現金主義会計は、次の㋑㋺㋩などが存在しない場合は、企業は、正確な期間損益計算を行うことができます。
しかし、現実には、企業としては、相当に稀な企業です。
  ㋑ 棚卸資産の期末在庫が、全く存在しない
  ㋺ 固定設備(機械、建物など)が全く存在しない
  ㋩ 信用取引(掛け売上、掛け仕入等)が全く行われていない

税法では、現金主義会計は、棚卸資産の期末在庫や機械設備が存在しないか、重要性が低い場合、かつ取引のほとんどが現金で決済される企業にのみ、現金主義による経理体制は認められません。


(3)費用・収益の認識原則

 ① 狭義の発生主義

発生主義会計は、「期間損益」の計算方式をです。
具体的に、どの年月日で費用及び収益が認識されるのかです。
それは、取引が発生した時点に認識されます(広義の発生主義)。
つまり、例えば、ある費用、又はある収益が、ある特定の会計年度に割り当てられて、費用または収益として認識されます。
しかし、企業の経営活動上の「費用及び収益」は、様々な性質を持っています。
この考え方(広義の発生主義)だけでは、費用及び収益の認識についての理論的根拠として限界があるのです。

この限界をクリアするために、会計学は、費用及び収益の具体的な認識原則として「広義の発生主義」以外に、「狭義の発生主義」を採り入れました。
 整理すると、
  ㋑狭義の発生主義とは、
   発生主義を特定の費用及び収益のみを対象とした限定的な認識基準とみる考え方です。 
  ㋺広義の発生主義とは、
   全ての費用及び収益をその発生の事実に基づいて費用または収益として認識する考え方です。

 ② 制度会計上の費用・収益の認識原則
費用及び収益の認識原則について統一見解はありません。
「企業会計原則」では費用及び収益の認識についての見解を、チェックしましょう。
 ※企業会計原則は、我が国の企業会計の規範です。

企業会計原則は、損益計算書原則において
「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。」
と規定しています。
この規定に拠ると、企業会計原則では、「費用及び収益の認識」については、広義の発生主義の採用を想定していると一般的に解釈されます。

我が国においては、
この企業会計原則に基づいて、次の㋑,㋺を規則とする考え方が一般的となっています。
  ㋑ 費用及び収益はその発生の時点で発生を認識し(広義の発生主義)、
  ㋺ 収益については利益の処分可能性という観点を考慮して、
   さらに実現主義というフィルターを通します。
   実現したと認められる収益だけを、当期の収益として認識する

 ③ 広義の発生主義の問題点

上記の説明のとおり、我が国においては、費用及び収益の認識について、一般的には「広義の発生主義」を採用します。しかし「広義の発生主義」については問題点もあります。


 ④ 実現主義の位置づけ
「広義の発生主義」によると、収益の認識原則たる「実現主義」は、「広義の発生主義」の例外的な一形態です。しかし、企業の本業の営業活動の成果である「売上高の認識」が、費用及び収益の認識基準の「例外的な一形態」と云うのは、おかしいです。


 ⑤ 売上原価の計上について
売上原価(費用)の認識は、発生主義の原則に基づいて、発生した時点で認識されるはずです。
しかし、実際には、売上高との対応関係にもとづいて「費用収益対応の原則」により認識されます。
この点から、全ての費用が発生主義により認識されると考えることには限界があるのです。
これが、費用収益の認識基準の「法令・規則」と、理論的な矛盾です。
そのため、あなたが、「費用収益の計上基準」を理解するには、理論だけでは不十分です。
税法として、また会社法としても、現実的に、どう処理されるのか(現実の規則)を知る必要があります。