土地の評価

土地の「時価」はどのように評価するのか?
 国や自治体の発表する公的な土地価格だけでも「路線価」「公示地価」「基準地価(都道府県基準地価格)」「固定資産税評価額」など種類が多く、分かりにくいです。

1. 公示価格
 公示価格は、国土交通省が出す「実勢価格」に基づく価額です。実際の土地に価額を付けます。 路線価は、国税庁が主に相続税の算出のために道路に価額を付けます。道路に面している土地の用途や形状から、相続税(贈与税、昔の地価税)の算出に使う価額です。

 路線価には、税務署が管轄する相続税路線価と、市区町村の課税部署が管轄する固定資産路線価があります。相続税路線価は公示価格の約8割、固定資産路線価は公示価格の約7割に設定されています。

 従って、路線価からの土地の価格算定には、路線価を0.8又は0.7で割り戻して計算します。公示地価は、地価公示法に基づき、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1回公示する標準地の価格で、調査は毎年実施されています。

 公示対象は、原則として都市計画法による都市計画区域内です。それに省令で土地取引が相当程度見込まれる区域が加わります。公示価格の発表は、1月1日時点のもので3月中旬頃です。土地価格動向の指標として有名です。

 公示地価は、公共事業用地の取得価格算定の基準とされます。また一般の土地取引価格に対する指標となること、適正な地価の形成に寄与すること、が目的とされています。

 そのため、各々の土地の本来の価値(客観的な価値)を評価します。つまり現存する建物などの形態に関わらず、対象土地の効用が最高度に発揮できる使用方法を想定します。

 各々の地点で2人以上の不動産鑑定士が別々に鑑定評価を行ないます。標準地の単位面積あたりの“正常な価格”(更地価格)が建前です。公示の際は、「住宅地」「商業地」「宅地見込地」「準工業地」「工業地」「調整区域内宅地」に分類されています。

 ちなみに2015年の公示地価では、公示対象の区市町村が1,376(東京23区および785市530町38村)、対象の標準地が23,380です。標準地の数は徐々に減らされています。

 なお表記として、「公示地価」ではなく、「地価公示」「地価公示価格」「公示価格」「標準価格」「標準地価格」などさまざまです。意味としては「地価公示法による標準地の価格」、「地価公示制度による標準地の価格」、「地価公示に基づく地価」です。

 公示地価の詳しい内容は国土交通省の「土地総合情報ライブラリー」で閲覧できます。
 実勢価格とは大きく乖離しています。
 土地取引者は、公示価格を指標とする取引に努める責務がある(地価公示法)。しかし大都市圏で公示地価を基に売買価格を定める例は皆無に等しく数倍のかい離も少なくない。逆に地方圏や地価下落期などでは公示地価を下回る取引もあります。バブル崩壊後の急激な地価下落期には、実勢価格よりも高い路線価の事例が頻発し、その頃の相続土地に大きな問題も生じました。

 公示地価や路線価などの公的価格は、土地価格の目安ではなく、上昇あるいは下落の全体的な傾向指標として考えるのが無難です。ただ土地の相続税や贈与税では、路線価の変動がストレートに影響するときは工夫が必要です。

 全国の最高路線価は、東京都中央区銀座五丁目の銀座中央通り(鳩居堂前)。公示地価の最高額地点は銀座四丁目(山野楽器銀座本店)。基準地価の最高額地点は銀座二丁目(明治屋銀座ビル)などが常連です。

2. 路線価
 路線価とは?一般的には「相続税路線価」を指すことが多いです。路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類があります。ちなみに「固定資産税路線価」は個々の土地の固定資産税評価額の基準価格です。
 相続税路線価は、相続税および贈与税の算定基準となる土地評価額です。公示地価の8割程度が目安です。調査は相続税法に基づいて行なわれ、国税庁(国税局)が各々の価格を決定します。

 路線価は、路線価図の道路面に対する価格です。
 「路線に面する宅地の価格(単価)は同じ」価格が決められます。ただし大都市部の幅の広い路線などでは、上り車線側と下り車線側、道路途中の状態変化で、個別の価格が付く 場合もあります。また実務では、個々の敷地における価格はその形状などに応じて補正をします。

 都市部の市街地では、路線(公道)に価格が付けられます。基礎となる調査地点(標準宅地)の数は、約33
万4千(2015年の場合)にのぼります。
 この数は、公示地価や基準地価の調査地点の10倍を上回ります。評価時点は、毎年1月1日、公表は7月1日
です。なお閲覧用の分厚い路線価図の作成は取りやめられました。

 全国の路線価図(過去7年分)は、国税庁のページで閲覧できます。路線価図には1㎡単価で千円単位の表示
です。例えば図中に「200」とあれば、1㎡単価は20万円の意味です。

 路線価における平均変動率の算出方法が2011年に変更されました。以前は標準宅地の価格を合計してから
平均を出す「加重平均」でした。変更後は各地点の変動率を単純平均です。変更後の算出方法は公示地価や、
基準地価と同じです。

 路線価は意外と役に立つのです。本来、路線価(相続税路線価)は相続税や贈与税の算出向け。ただ、実態
として、都市部の公道に対して路線価があります。このため一般的な地価算定に意外と役に立ちます。

 公示地価と、実勢価格は、通常大きく乖離しています。「公示地価の8割が目安」とされている路線価と、
実勢価格も同様に乖離しています。路線価をみて「売買価格」の目安もつかみにくいです。実務では、近隣の
売買事例と組み合わせ、その割合(路線価の比率)で凡その傾向をつかめます。

 例えば、近くで似通った土地の売買事例が100万円@1㎡,路線価が60万円として、調べたい土地の路線価が48万円(60万円の8割)なら、売買価格は目安として80万円と推測できます。

3. 基準地価
  公示地価とよく似たものに「基準地価」があります。価格の性質や目的、評価方法などは公示地価と、ほぼ
 同様です。異なるのは、基準日(価格調査の時点)が7月1日です。毎年9月20日頃に公表します。公示地価
 は1月1日現在のもの。
 
  また、根拠法は地価公示法です。調査の主体は都道府県です。公示地価は国の調査です。
 さらに、公示地価は、都市計画区域内が、主な対象です。一方、基準地価は、都市計画区域外の住宅地、
 商業地、工業地、宅地ではない林地なども含みます。平均的な地価動向にも違いが生じます

  調査対象の基準地の多くは公示地価と異なっています。しかし一部は、公示地価の標準地と重複している
 ため、重複分は、半年ごとの地価動向を確認できます。また調査対象地点のことを公示地価では「標準地」
 といい、基準地価では「基準地」といいます。

  ちなみに、2014年の基準地数は、宅地(住宅地、商業地、工業地)が21,231地点、林地が509地点、合計
 21,740地点です。調査対象範囲は公示地価より広いものの、地点数は公示地価よりも少ないです。
  なお、公示地価では、評価にあたる不動産鑑定士が1地点につき「2人以上」です。基準地価の規定は、
 「1人以上」です。また基準地数は年々減っています。
 「基準地価」は、「基準地価格」,「基準地の標準価格」,「都道府県地価」,「都道府県基準地価格」,
 「地価調査価格」など、公示地価と同じく、さまざまに表記されます。
 自治体からの公表の際は「県基準地価格」となっている場合が多いようです。
  基準地価の詳細は、国土交通省の「土地総合情報ライブラリー」で閲覧できます。

4. 固定資産税評価額
  固定資産税評価額とは、総務大臣が定める固定資産評価基準に基づき、市町村が、個別の土地・不動産に
 対して策定する評価額を指します。

  固定資産税評価額は、自治体の担当者が一つ一つ確認して決定します。建物等は新築時において確認し、
 経過年数に応じて逓減させます。

 (1) 固定資産税評価額が使われる税金
    次に固定資産税評価額が用いられる税を紹介します。税金計算において用いられるものであるため、
   諸費用の計算において用いられると考えましょう。

   (ア) 固定資産税・都市計画税
     固定資産税・都市計画税は、資産の持主に課されます。税額は固定資産税が評価額の1.4%、都市
    計画税が評価額の0.3%です。
  (イ) 登録免許税
    登録免許税は不動産の登記に掛かる税金です。税額は固定資産税評価額の、最大で2%です。
   (ウ) 不動産取得税
    不動産取得税は不動産の所有者に対する一度限りの税金です。税額は固定資産税評価額の3~4%です。

 (2) 固定資産税評価額の計算方法
    固定資産税評価額の計算方法について一つずつ見ていきましょう。
  (ア) 土地
    土地の固定資産税評価額の計算方法を紹介します。
   ① 地目の決定
      土地の地目を決定します。地目とは、田、畑、宅地、山林、牧場などです。
     地目は土地の現況、及び利用目的に重点を置いて決められます。
    登記簿上の土地の地目と、実際の土地の地目は異なることが多々あります。なぜなら登記上の地目は
    登記のタイミングで決定されますが、登記後に土地の用途が異なることがあるからです。
    固定資産税評価額は登記簿における地目に関わりなく、現況に基づいて決定されます。
    宅地(建物を建てるための土地)の固定資産税評価額の計算方法を説明します。
  (イ) 地積(土地の面積)の決定
    地目を決定した後、土地の面積(地積)を決定します。土地の面積の決定は次のとおりです。
   ① 登記簿にある土地については、登記簿に登記されている地積による
   ② 登記簿にない土地については、現況の地積による
    土地を購入した場合、ほぼ100%登記を行いますので、地積は登記簿に記載されている面積です。
  (ウ) 宅地の地域
     地目を宅地と決定し、地積も決まりました。次は、評価額を計算するにあたり、
    もう一つ確認すべき項目があります。宅地が存するどういった地域に区分されているのかです。
    区域は概ね次の2種類です。
   ① 市街地的形態を形成する地域では、「市街地宅地評価法」による評価
   ② 市街地的形態を形成していない地域では、「その他の宅地評価法」による評価
    備考:市街地的形態を形成する地域とは概ね「市街化区域」のことを言います